神戸市、大規模災害時の情報共有環境整備にNeatデバイスを採用
神戸市は、災害対応病院を全区に配置し各病院への支援を拡大。
大震災を乗り越えた経験を生かし、オンラインでの情報共有環境を整え
大規模災害時の医療体制を強化しました。
Featuring: 神戸市様
1995年に神戸市を襲ったマグニチュード7.3の「兵庫県南部地震」は、日本で初めて震度7を記録した大都市における直下型地震であり、死亡者6,434人、住宅被害約64万戸に及ぶ甚大な被害をもたらしました。建物の倒壊に加え広域な火災も発生し、20世紀の地震災害としては、関東大震災に次ぐものとなりました。
南海トラフ地震発生の可能性が予測される近年、神戸市では、過去の被災経験に加えて、東日本大震災や直近では能登半島地震での教訓を生かし、新たな技術やツールを取り入れた防災対策に注力しています。
神戸市健康局では、2014年に策定した「災害時救急医療マニュアル」の大幅な見直しを行い、災害対応力を強化しました。災害対応病院の追加指定と支援の拡大、また高性能のデバイスを活用したオンラインでの情報共有や衛星通信の導入などに対する支援を拡充することによって有事に備えています。今回は神戸市健康局地域医療課の川村翔太氏に詳しく話を伺いました。
災害対応病院への支援拡大とオンラインでの情報共有体制の整備
神戸市では、震災から30年を来年に控え、2014年に策定した「災害時救急医療マニュアル」をゼロベースで見直し、市が独自に指定する災害対応病院を中心とした患者受入体制の強化策について概要を発表しました。2019年、神戸市は策定から5年が経過したマニュアルの見直し作業を開始しましたが、コロナ禍の対応が急務となったため、作業を中断せざるを得なくなりました。今回のマニュアル見直しでは、コロナ禍でのオンライン会議の普及を踏まえ、オンラインで情報を共有する体制に移行したことを大きな変更点としています。
神戸市ではまず、これまで指定していた災害対応病院の見直しを行い、大規模災害に備えた更なる体制強化のため、「兵庫県地域防災計画」に基づき、2015年に神戸市独自に指定した6か所の災害対応病院に5か所を追加して、各行政区に最低1病院、合計11病院を指定しました。
これに伴い、災害対応病院の役割も見直し、患者を受け入れるための体制を強化することとしました。さらに、院内での医薬品の備蓄や医療資材などの管理費の充実に加え、支援対象を非常用電源の燃料や通信機器の導入・維持費用などにも拡大しました。また、被害の規模に応じて、区単位、隣接区間、市域を4分割する広域医療圏を設定し、被害の軽重に応じた相互支援が可能な体制を整えました。
オンラインによる災害時の医療提供体制の強化
コロナ禍で医療の現場でもオンライン会議が普及したことから、神戸市では有事の際に作戦本部に関係者が集まることになっていた運用を見直し、オンラインで情報共有を行う方針に切り替えました。
神戸市でオンラインを活用した情報共有が行われるようになった過程について、神戸市健康局地域医療課の川村翔太氏はこう語ります。
コロナ禍における感染予防のための対策として、対面を避けることができるビデオコミュニケーションが自然と普及したということです。
神戸市の医療機関でのWeb会議には、ほとんどの病院で主にZoomが利用されていたことから、2024年にZoom Video Communiations Inc.の日本法人であるZVC JAPAN株式会社と、災害時における医療連携のためのWEB会議運用への協力に関する協定を締結しました。この協定では、災害対応病院と効率的にZoom利用可能な体制を構築するための技術的支援および、災害発生時にZoomを用いたリモート会議を有効活用するために必要な環境整備への協力を約束しています。
有事の際のオンラインでの情報共有のために有効な施策として、災害時にインターネット環境が途絶えても衛星回線で通信ができる「Starlink」の導入も進めています。Starlinkは、地上から550キロの場所と、従来の衛星と比べて比較的近い場所に飛んでいる5000から6000の衛星を利用する通信サービスのため、遅延が少なく会議もスムーズに対応できるということです。災害対応病院においては、今年度中の導入に向けて検討が進められています。
Neatデバイスの導入で、災害時の救急医療に欠かせない迅速な判断が可能に
災害対応病院間でのビデオコミュニケーションツールとして、既に多くの病院で利用されていたZoomを活用する方向で調整するなかで、各病院へNeatデバイスを導入することが検討されました。前述の川村氏は、2023年の夏にZVC JAPAN株式会社の担当者からの紹介でNeatデバイスを初めて体験したときのことを振り返りこう話します。
神戸市では現在、Neat BarとNeat Frameを各1台導入し利用しています。また、災害時における迅速な情報共有のため、災害対応病院11病院と市民病院の計12か所にNeat Frameを1台ずつ配備し、普段のWeb会議などでも活用しています。神戸市が主催する参加人数の多い会議では、Neat BarとNeat Frameを併用し、Neatデバイスを活用した、より臨場感のあるビデオコミュニケーションが可能になりました。
災害時のコミュニケーションに欠かせないデバイスに
川村氏は、Neatデバイスの使用感について以下のように評しました。
Web会議に参加する相手方からも、これまでのweb会議との違いを評価する声が多く聞かれるといいます。川村氏はまた、Neatデバイスのなかでも、特にNeat Frameの使いやすさに着目しています。
オンラインを活用した災害時医療への期待と可能性
今後期待することとして、医療や災害対応、教育など、具体的な目的を想定したパッケージを作ってみたらいいのではないか、例えばZoomや衛星通信サービスなどの外部サービスとのセッティングも含めた活用方法を提示することにより、これから導入を検討する自治体や企業なども、実際の活用のイメージを持ちやすくなるのではないかというご提案をいただきました。災害時医療に関して言えば、大規模災害が広域で発生した場合に、複数の自治体でオンラインによる情報共有の体制が整っていれば、自治体間での相互応援がよりスムーズになると期待されます。また、停電時を想定し、デバイスとモバイルバッテリーとのセット販売があれば、導入当初からまとめて購入しやすくなるというご意見もいただいています。
被災後の生活における活用方法についても、将来的な災害時医療の在り方のひとつとして話されました。
川村氏は神戸市消防局から出向されており、消防局で多くの実災害現場を経験してきたことから、災害時の対応計画も、具体的なイメージをもって一歩先を見据えた内容に変えてきたと話されています。阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)から間もなく30年が経過しようとする中、当時を知る職員も少なくなってきています。彼らからその経験を継承し、現代のテクノロジーを融合させることで、今後起こり得る大規模災害にしっかり対応していきたいという思いも伺いました。
当時ではまだ考えられなかったNeatのデバイスが、災害時の救急医療現場で活用されることで、迅速で的確な人命救助につながっていけば、という期待感を感じました。