UCCグループが“Web会議しやすいイノベーティブな会議室”を構築した方法
ハイブリッドワークの課題を解決するオフィスづくり
COVID-19の感染拡大を機に、企業のオフィスの役割は変化している。ハイブリッドワーク中のコミュニケーションを促進するために、オフィス設備を刷新したUCCグループの取り組みを基に、新しい会議室の在り方を考える。
パンデミック(感染病の世界的大流行)でも業務を継続するための緊急対策から、ハイブリッドな働き方を実現するための常用ツールへ――。Web会議ツールの位置付けは、変わりつつある。
ユーザー企業がWeb会議ツールに求める品質の水準も上がっている。これまでのように、単に「音声や映像で意思の疎通が取れる」だけでは不十分と考える向きもある。より効果的なコミュニケーションを実現するために、対面での会議と変わらない品質が音声と映像に求められるようになった。
さらにオフィス勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワーク体制は、Web会議に新たな課題を生みつつある。全員がリモートで参加するWeb会議は、PCに内蔵されたカメラとマイクで各人がコミュニケーションを取るため、コミュニケーションの公平性が保たれていた。しかし会議室からの参加者と在宅勤務者が混在するハイブリッドワーク中のWeb会議は、会議室内にいる参加者とそれ以外の参加者でコミュニケーションの取りやすさに格差が生まれ、ストレスを感じる従業員が増える可能性がある
このような考え方でWeb会議の仕組みを見直し、オフィスの会議室の設備を全面的に刷新したのが、コーヒーなどの飲料や食材の製造と販売を手掛けるUCCグループ(兵庫県神戸市)だ。同社は“従業員のコミュニケーションを促進するオフィス”を実現するために、どのような方法を取ったのか。
Neatデバイス導入前の課題:Web会議の音声や映像の乱れは従業員のストレスに
「いつでも、どこでも、一人でも多くの人においしいコーヒーを届けたい」という創業精神の元、コーヒーに関わるすべての事業を手掛けているのがUCCグループだ。 ハワイ、ジャマイカに自社コーヒー農園を持ち、コーヒー豆の栽培から飲料などの製造・販売までを一貫して手掛けている。一般消費者には、スーパーやコンビニエンスストア、自動販売機で売られる缶コーヒーやレギュラーコーヒーでおなじみだが、実は、喫茶店やレストランなどに卸す業務用コーヒー事業の割合が高い。1933年の創業以来、日本のコーヒー文化の発展に貢献してきた。グローバルに、また日本各地に拠点を持つUCCグループにとって、ハイブリッドワーク制度を整えることは必然でもあった。
UCCグループは2020年から大規模なITシステムの見直しを行っている。UCCグループのITソリューションプロバイダーとして、同グループの全ての情報システムを管理するユーコット・インフォテクノの大森晋介氏(ICT&デジタル本部 UXデザイン部 部長)はこう振り返る。「『従業員にとって使い勝手の良いITを構築せよ』というCIO(最高情報責任者)の大号令の下、ユーザセントリック(従業員目線)にこだわった業務システムとオフィスの刷新に着手してきました」
オフィス刷新の取り組みとして、2023年2月に移転した東京本部の新オフィスに、最新の設備と機器を導入して“どこでも働ける環境”を構築した。広範囲なWi-Fiカバレッジ、TypeC給電含む適切な電源管理と、スマートフォン用のワイヤレス充電などを取り付けた。さらにすべての会議室には壁面に大型モニターを、定員6人以上の会議室には固定型のWeb会議システム(大型モニターとカメラ、マイク、スピーカー)の設置を決定した。
UCCグループが固定型のWeb会議システムの導入を決定した背景には、「業務内容に合わせ最適な場所で働く(Activity Base working)」という考え方が強くあったからだ。「当社の従業員は、自宅やオフィスの会議室で、Web会議を1日に何度も実施しています。ただマイクやスピーカーの品質が悪いと音声が聞き取れませんし、カメラの品質が悪いと相手の表情や感情を読み取ることが難しくなります。こういった不具合が頻発するとお互いストレスになりますし、顧客へのプレゼンテーションに使うことを考えると音や映像のクオリティが低いと「ITに弱い会社」という印象すら与えかねず、企業イメージの低下も懸念されます」(大森氏)と話す。
新オフィスにNeat Bar導入 その決め手とは
UCCグループ東京本部に固定型Web会議製品を導入するための作業は、2022年6月に始まった。
設置場所は、役員会議室と一般会議室の2つの会議室。どちらも定員6~12人の大きめの会議室で、取引先や在宅勤務者がリモートから参加する会議に使われることが頻繁にあると想定したためだ。Web会議システムには、役員会議室にZoom Video Communicationsの「Zoom Rooms」を、一般会議室にはMicrosoftの「Microsoft Teams Rooms」を採用した。UCCグループは従業員同士のWeb会議を「Microsoft Teams」で実施するように従業員に推奨しているが、役員は社外にいる相手とのWeb会議で「Zoom」を利用するニーズが高かったためだ。
Web会議デバイスを選定する際は、Zoom RoomsとMicrosoft Teams Roomsの両方にも利用でき、かつ会議室で快適な会議を実現できることが要件となったという。幾つかの製品の中から最有力の候補としてUCCグループが選んだのは、Neatframeの「Neat Bar」だ。
Neat Barは、スピーカー、マイク、広角カメラが一体型になったサウンドバータイプの会議デバイスだ。既に会議室に備え付けてある大型モニターに簡単に取り付けて使用することができる。専用のコントローラーとしてNeat Padが付属している。同製品はZoom RoomsとTeams Roomsのデバイスとして使用可能であることもUCCグループの要件に合致していた。
UCCグループがNeat Barを採用する決め手となったのは、カメラ部分に備わっているAIセンサーを活用した独自の自動人物フレーミング機能だ。「率直に申し上げると、音声については、候補となった製品のほとんどが『音質の良さ』と『集音範囲の広さ』をうたっていました」と大森氏は話す。「しかし映像の面では、『一人一人の顔を認識して、同じ大きさ、同じ高さに自動調整してウィンドウに表示する』という機能があったのは、候補となった製品のうち、Neat Barだけでした」(大森氏)
自動人物フレーミング機能は、Neat Barが撮影した会議室全体のカメラ画像の中から人の顔を切り出し、一人一人を別々のウィンドウに分けて表示する機能だ。ズーミング(拡大・縮小)やパン(移動)は自動的に実行する。そのため会議室にいる各参加者の座る位置に関係なく、顔をほぼ同じ大きさで表示。全員が各自のカメラからテレビ会議に参加しているような画面が実現できる。
UCCグループが実現した“Web会議がしやすい会議室”の中身とは
ユーコット・インフォテクノは2022年7月からNeat Barの実機を借りて、東京本部と全国の各拠点間のWeb会議テストを実施した。ノイズキャンセリング機能の利きや音声のクリアさを確かめた上で、同年10月に正式に導入を決定した。役員会議室にはZoom Roomsを搭載した「Neat Bar Pro」と同製品の操作用タッチパネル「Neat Pad」を、一般会議室用にはTeams Roomsを搭載したNeat BarとNeat Padを採用した。Neat Bar ProはNeat Barの上位モデルで、3画面のマルチモニターに対応していることもあり、役員会議室にはメインディスプレイとして85型モニタを置き。両脇に65型モニタをサブディスプレイとして接続している。
Zoom roomsやTeams roomsとNeat Barの連携は容易にできたと大森氏は言う。同氏は次のように説明する。「『Microsoft Outlook』で会議室を予約すると、Teams Roomsに自動的にひも付けられるようにしたかったので、MicrosoftがWebサイトで公開しているTeams設定用マニュアルを参考にして設定しました」
他拠点にもNeat Barの導入を進めるUCCグループ
UCCグループ東京本部の新オフィスは予定通り、2023年2月に正式運用を開始した。それに伴い役員会議室と一般会議室も、日々のWeb会議に活用されている。
新しいWeb会議システムは各社の役員から「対面で話しているのと同じように、互いの表情をちゃんと読み取れる」と評価されているという。水平3連のモニターは、中央モニターを資料の投影に、左右のモニターは参加者の顔を映し出すために使っている。「従来の役員会議は“顔出し任意”でしたが、今では“顔出し必須”が内規になっているようです」と大森氏は言う。
Neat Barのデザイン性と機能は、従業員の働くモチベーションを高めるのにも役立つと大森氏は考えている。「若い人の多くは、おしゃれで快適なオフィスで働きたいと思っているはずです。その人たちに当社への愛着を持ってもらうと同時に、円滑な社内コミュニケーションができる環境を整えれば、生産性がおのずと高まるのではないかと期待しています」(大森氏)
UCCグループのオフィス改革、今後の展開
UCCグループは今後このオフィス改革を各地方拠点にも展開する予定だ。「多様化する働き方の中で「オフィス」は組織に携わるステークホルダーが集まる唯一の場になっています。働く場の選択肢が多様化し、人や情報が分散する中で ”UCCグループ”という組織のもとに関わるモノ・コトを集め、それらをブレンドして新たな価値を生み出す、すなわちイノベーションを起こす場こそが、これからのオフィスであるという考え方です。Neat Barを活用して、ぜひこの新しい働き方におけるコミュニケーションを創造していってほしいです」(大森氏)
オフィスに出社する従業員と在宅勤務中の従業員のコミュニケーション格差を埋めるには、UCCグループのように“会議室の在り方”を見直すことが有効な解決策となる可能性がある。
(出典:ITメディア )