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江戸時代から伝わる輪島市の伝統工芸「輪島塗」をNeatの活用により国内外へ広め、輪島の漆器産業の再生とともに地域創生を目指すFeaturing:輪島キリモト様

石川県輪島の桐本家は、「木と漆」の仕事に200年以上携わってきました。江戸時代後期の輪島漆器製造販売から始まり、木を刳ることを得意とする「朴木地屋」を経て、七代目の桐本泰一氏は、木工製品や漆の器、小物、家具、建築内装材に至るまで広く手がけています。多くの力ある職人さん達とともに、木と漆が今の暮らしにとけ込むようなモノ作りに挑戦し続けています。

コロナ禍をきっかけにリモートでの営業活動を始め、世界中に輪島塗を広める活動や輪島の職人を育てる活動などを続けることで輪島塗の産業再生を目指し、地元輪島の地域創生にも貢献しています。


輪島キリモト~人の心をホッとさせ、暮らしを気持ちよくさせる漆器づくり

代表 桐本泰一様

輪島キリモトの事業内容についてご紹介ください。

 輪島キリモトは、1700年代後半から輪島塗の製造販売をしておりました。三代久太郎は明治から大正時代初めまで輪島漆器業界の職人と小さな漆器業者の漆工労組の組合長を長く務め、職人と輪島漆器業界の下支えに注力しました。五代久幸が昭和4年に、主に朴木を使い、木を刳る加工を得意とする「朴木地業」に転業し、六代目俊兵衛は1960年代に座卓、飾棚、衝立、屏風等の漆器木地家具を創り出す設備投資を行い、輪島漆器業界の家具分野進出を木地業から支えてきました。

七代目になる私は、大学で学んだ工業デザインのスキルを活かし、漆器木地業を生業としながら、「暮らしで使うための」漆の器、小物、家具、建築内装材などの企画製造販売を手掛けています。木地、下地、塗り、蒔絵などの職人さんたちと共に、商品企画からデザイン、設計、木地づくり、塗り、販売まで一貫した漆のもの創りを行っています。

漆製品の魅力と、輪島キリモトの事業コンセプトについて教えてください。

 うるしの里・輪島で作られる漆器は、「本堅地」と呼ばれる天然木を使い、欠けやすい部分に布着せを行い、地元で産出される珪藻土を焼成粉末した「輪島地の粉」を用いた下地を施し、研ぎ、中塗、上塗りを経て作られます。

 天然木や珪藻土、漆の樹液から作る塗料、米糊から、女性の毛髪で作る刷毛などの道具にいたるまで、その製造の過程ではすべて天然の素材を使用し、環境に配慮しているというところが大きな魅力です。

口当たりがやわらかい漆器のぐい呑み

 漆製品の魅力は、そのほかにもたくさんあります。熟練した職人が手間をかけて作る。傷んでもリメイクでき、長持ちする。使うほどに艶が増す。漆は保湿し続ける塗料なので、手触りや口当たりが柔らかい。酸やアルカリに強く抗菌作用があるなど、漆製品にはさまざまなメリットがあり、輪島塗は、今で言うロハスやサステナブルな暮らしを、はるか昔から実現しているのです。

何層にも重ねる下地の塗工程

 使い心地や機能性、見た目の美しさにこだわるのはもちろんのことですが、手触りや口当たりが柔らかな漆器には、人々の心をほっとさせ、心地よくさせるという魅力もあります。「今の暮らしを楽しむ人々が、今以上にほっとする瞬間、気持ちいいなと思う瞬間を楽しんでいただくための漆製品創り」をコンセプトにして事業に取り組んでおります。

 桐本泰一様は輪島市のある奥能登の観光や経済の振興に注力されていますが、具体的にどんな活動をされているのですか?

 2011年に設立された「輪島漆再生プロジェクト実行委員会」の委員として、輪島漆の再生に関わりながら、「輪島クリエイティブデザイン塾」の塾長を務め、輪島市内の漆器業に携わる若手経営者や輪島漆芸(しつげい)技術研修所に所属もしくは卒業した若手創り手を応援しています。

 また、力のある若手の漆器作家の作品を展示しながら、作り手(作家)と買い手が交流できる場として、観光客が多い時期に「わじま工迎参道」を開催してきました。2023年1月には大阪の大手百貨店でも「わじま工迎参道」として作家の作品を販売し、輪島塗と輪島市の観光をアピールしたほか、8月に輪島市で3年ぶりに開催が決まった「キリコ祭り」でも同様に展開して、観光客の誘致に輪島塗の魅力を活用しています。

地元の観光や経済の復興には、個々で活動することも大切ですが、国や県、市の援助を受けながら横の連携をとって、大きな面にして輪島塗りや地元の魅力を伝えていくことが大変重要だと考えています。輪島塗りの再生、ひいては輪島市の産業経済再生の一助になればと思い、このような活動を続けています。

コロナ禍で売上が減少。現状打破のためにNeatデバイスを導入

 2019年末から始まったコロナ禍で売り上げが減少したことから、SNS等で動画配信を始める店や企業が増え、伝統工芸の世界でも動画配信を行うところが増えました。輪島キリモトでも、現状打破のためにインスタライブを始めたのですが、時間も手間も人員も必要になるうえに、音声や映像の精度も満足がいくものではありませんでした。

 何かいい配信方法はないかと思案していたところ、IKEUCHI オーガニック京都店の益田店長に「Neat.Bar」を紹介していただいたことが、Neatデバイス導入のきっかけです。Neatデバイスの先端的なデジタル技術を活かした「リモート接客」の拠点を整備し、商品の提供方法を転換しようと考え、昨年7月に「漆のスタジオ本店」をオープンしました。

 「展示スタジオ」と「キッチンスタジオ」から構成される漆のスタジオ本店には、輪島キリモトの漆の器、家具、内装材などが展示されています。展示スタジオには65インチのモニターと最先端のデジタル機器Neat Bar Proを備えており、お客様は国内外問わず、リモート接客にて展示商品を購入することができます。

Neatデバイスを使用してみていかがですか?

 漆のスタジオ本店では、Neat Bar Pro、Neat Frameを使用しています。最初はいわゆるZoomを活用したお取引様とのリモート会議が中心でしたが、HPの改修などを重ねて、現在はデジタル店舗でのリモート接客などにも利用しています。

 また、海外からのお客様が観光や視察に訪れる際の事前打ち合わせにも活用しています。昨年から今年にかけてオーストラリアやマレーシアの旅行代理店とリモートで打ち合わせをし、それぞれ28名と17名に漆のスタジオ本店を訪れていただきました。

 さらには、新規の取引先様への商品のプレゼンテーションや、設計事務所への漆の内装材の説明など、1週間で3〜4件のリモート打ち合わせに利用しております。多い日では一日に4件もの打ち合わせをすることもあるほどで、現在はNeatデバイスをフル活用しています。シンガポールで来年開催を予定している輪島塗を中心とした企画展で輪島キリモトが行うワークショップのための、石川県とシンガポールと輪島キリモトの3者でのリモート打ち合わせでも、Neatのデバイスは活躍しています。

 Neatデバイス導入後は、自動フレーミング機能により新規のお客様などへのプレゼンテーションが1人でできるうえに、高精度の画質で、微妙な色合いや質感の表現が難しい漆の商品やサンプルをしっかりと提案できるようになりました。マイクの性能もよく、棚に並ぶ商品を取るためにデバイスから少し離れても、マイクの前で話すのと同じように声が聞こえるというのもメリットです。

漆のスタジオでNeat Bar Proを使い実演販売。漆器のテキスチャーまで見せられる
自動フレーム機能でスタジオの奥に移動してもカメラがズームアップしてくれる

漆の色艶をリアルな画質で伝えることができ、テクスチャーの違いも再現してくれるので、お客様も商品について理解しやすいようです。コロナ禍以前は、市外や県外への出張が必要不可欠でしたが、Neatデバイスのおかげで、輪島にいながら質の高い打ち合わせや提案が可能となりました。

Neatは桐本様にとってどんな存在ですか?

リモートで打ち合わせや接客をしていると、モニターの向こうにいる人から、「画面がきれいですがデバイスは何を使っているんですか?」と必ず聞かれます。国内外問わず、リアルな映像を届けてくれるNeatのデバイスは、僕にとっては、ドラえもんの「どこでもドア」なんです。

Neatデバイスは、漆のスタジオオープンからのこの一年間で、輪島キリモトに大きな影響を与えてくれていますが、まだまだライブコマースの認知度は低いので、今後は個人の方でも利用できることを周知していきたいと思っています。Neatの製品は遠隔をつなぐだけの会議システムではなく、輪島にいながらにしてリアルに商品をPRできる。リモートによるBtoCでもじゅうぶん機能するデバイスだと考えています。

今後は、職人さんの作業風景や、わじま工迎参道をzoomで配信するなど、どんどん活用していって、Neatデバイスのような高性能のデバイスの利用が伝統工芸の業界でも当たり前になっていってほしいですね。

Neatは輪島キリモトにとって切っても切れないパートナーです。輪島塗に限ったことではなく、伝統工芸の世界はトラディショナルなものをよしとする世界ですが、実際の伝統工芸は、長い年月のなかで革新の連続なんです。常に時代にあわせたものを開発し続け、その革新が連なって伝統になっているのです。

その昔、輪島塗はサンプルを背負って徒歩で北海道まで営業に行っていました。Neatのデバイスは、どこでもドアのように、ここ輪島にいながらにして、先人たちと同じことをやってくれています。そして、情報を発信するだけではなく享受することもでき、それを売り上げにつなげることもできます。

事業者としての未来をどのように予測していますか?この先目指されるものを含んだ「輪島キリモト様の将来の展望」をお聞かせください。

本業は「木製品、漆器製品の製造販売」ですが、今後は、お客様をリアルに「漆のスタジオ」にお呼びするPR活動も活発にしていきます。ほんものの日本の漆器が、暮らしの中をもっと気持ちよくし、ホッとさせる道具であることと同時に、輪島で生み出す漆器の機能性や特殊な技法なども知らせて行きたいと考えています。

そんな活動を力強くサポートしてくれる最先端の機器である「Neat Bar Pro」や「Neat Frame 」を最大限に活用して、トラディショナルである日本の工芸を国内のみならず世界に広めていきたいと思っています。

 

副代表 桐本順子様

 漆器~世界一水分を含み、触感がよい器~を求めて世界からインバウンド客が!

 私はそもそも輪島で生まれていないので、輪島塗のことは結婚後に知ったんです。最初は漆器とプラスチックの製品との違いがわからないようなレベルでした。そんなときある方に、「疲れたときに漆器を使ったら違いがわかるよ」と言われ、実際に疲れたときに使ってみたら本当に違いがわかったんです。手から伝わる触感をとおして、漆器が体に染み込むような素材感のあるものだということを体感しました。

 漆という素材は世界一水分を含む塗料であり、それは私たち人間の水分量と似ていて、漆器を手にすると握手をしているような感覚を覚えます。もちろん、輪島塗は伝統工芸品であり知名度が高いということも重要な要素だとは思うのですが、スキンシップをはかっているような感触というのも漆器の大きな特徴だと思います。

実は普段使いで使い込むほど魅力が分かる漆器

 輪島塗は特別なときにだけ使うものというイメージをお持ちの方が多いのですが、こんなに使い心地のよい食器なのだから、毎日使ってほっとしていただきたいという思いから、弊社では日常使いできる製品を生み出しました。漆器は傷がつきやすいのですが、特殊な製法により金属のスプーンなどを使えるようにしたものです。遠い存在だった輪島塗を、ぐっと身近なものに近づけたというのが、自社製品の特徴です。

 漆は使うほどに水を蓄えて触感がよくなり艶が出ます。それはまるで生き物のようで、「最初は知り合い程度だったものが使っていくうちに家族や親友になって、最終的には自分の体の一部みたいになる」と言う方もいます。意外かもしれませんが、漆器は落としても簡単には破れないほど丈夫なんですよ。そこも日常使いに適していると、毎日使いながら実感しています。そして、壊れたとしても直してまた使えるというのも特徴です。

海外の旅行会社に初めてNeatデバイスで漆のスタジオをご紹介していかがでしたか?

 オーストラリアの旅行会社の方から漆のスタジオ本店への見学の申し出があって、オンラインでご説明するときに使用したのですが、画像がきれいで音声が途切れることなく説明することができました。相手がすぐそこにおられる感じで、気持ちが通じるような印象を受けました。実際にこちらにお越しになったときには初めて会ったような気がしなく、以前からのお友達のようにハグしていただいたんです。

 オンラインで説明を聞く旅行代理店の方は、見学に連れてくるお客様を満足させないといけないので、いろいろな漆器の商品を見ていただくのですが、漆器の色や質感は普通はパソコン越しの画像ではなかなか伝わりにくいのです。でも、Neatのデバイスを使うとそれが本当にリアルに伝わるので、先方にも「早く行きたい」と言っていただけました。

オーストラリアからの観光客が漆のスタジオに来訪

輪島キリモト様がインバウンドへの取り組みに注力されるようになったきっかけと理由を教えてください。

20年くらい前から、漆に興味を持つ方が海外から訪ねてこられるようになりました。日本人よりも日本の伝統工芸やほかの文化をすごく大切に思ってくださる方が、何人も訪れてくれました。そのうちの一人でイスラエルから来た方に、「日本の工芸を扱ってそれを自国で展開する意味は何ですか?」と伺うと、「日本人の相手を思いやる心だとか、より良いものを作ろうとする向上心だとか、そういう“人に対して優しい気持ち”を、商品を通して伝えたら戦争がなくなる」とおっしゃったんですよね。その言葉がきっかけで、インバウンドに取り組もうと考えました。

その後に来られた方たちも、ただ単にいいものを持ちたいから日本の伝統工芸品をという考えではなくて、すべて天然の素材を使っていることだとかを重要だと捉えていて、「漆器は次世代の社会に貢献できるプロダクト」であるということを、お客様に教えていただきました。そういうお客様から教わったことを、私の英語で海外のお客様に伝えることができるならば、少しがんばりたいなと思ったんです。

コロナ禍前と後のインバウンドの状況と、キリモト様の商品へのお客様の反応はいかがでしたか?

コロナ感染症拡大前は、徐々にインバウンドのお客様の工房見学が増えてきていました。コロナ禍では「ゼロ」となりましたが、石川県や輪島市は、コロナ禍収束後のインバウンド客と観光の復活のために準備を進めていました。輪島キリモトとしても、3年前より観光代理店から文化観光、商業観光などを目的とした見学打ち合わせやモニターツアーの申し出を受け、輪島市観光課、輪島市観光協会、輪島商工会議所等とも連携して、インバウンドのお客様を受け入れる体制を整えていました。

今年に入り経済の正常化が目指されるようになってからは、工房案内や複雑な輪島塗などの工程を英語でのご説明と接客を私が担当し、フランス、アメリカ、スペイン、イタリア、オーストラリア、マレーシアなどからお客様を迎えています。

インバウンドのお客様は、まず漆器を触って、「今までにない触感だ」と驚かれ、見た目の美しさや見た感じよりも軽いことや、持ちやすさなどにも感動されます。そして、モノづくりに携わったことのある方は、その技術の高さを評価してくださいます。

輪島キリモト様の、Neatデバイスを利用した今後の展開について教えてください。

昨今のインバウンドでは、日本の有名な観光地ではなく日本独特の風景だとか、産業や文化などを見たい知りたいという需要があります。これまでは、見学の申し出を受けるという形だったのですが、今ある需要に応えるために、Neatのデバイスを通じてこちらから発信という形で情報をお届けできたらと思っています。

Neatのデバイスを使用することでさまざまなものをリアルに紹介できるので、テレビの旅番組のような感じで輪島や輪島塗の情報を発信できるのではないかという可能性を感じています。

漆器についてはまだまだ知られていないので、そもそも漆器とはなにかということを知っていただきたいですね。そして知ったうえで気に入っていただけたらいいなと思います。日常的に漆器を使い、その積み重ねで日々の生活が豊かになることを身をもって体験しているので、そういう素敵な素材がありますよというのをできるだけ早く多くの方に伝えたいなと思っています。

自分たちで出向いて伝えるということには限界を感じているので、Neat Bar Proの力を借りて、日本だけではなく世界中に飛び出していくということができたらと考えています。

Neatのデバイスは、今ある機能をまず活用することが大事だと思うので、活用してきたなかで感じた魅力的な部分、Neatデバイスという宝物を、早く活用してみなさんに情報を届けたいですね。

輪島塗の復活が地域の復活~地域創生を伝統産業の革新で実現する!

輪島商工会議所 田崎大樹様

田崎様と、輪島キリモト様との関わりを教えてください。

 輪島商工会議所が、海外に輪島塗を広める目的で2008年に始めた「ジャパンブランド支援事業」で、パリの三越へ出展する際に輪島キリモトさんの商品を出品していただいたのが最初のお付き合いになります。その後は、国の各種事業補助金の申請の相談業務や事業計画書の作成のお手伝いなどで関わっております(輪島キリモト様の漆のスタジオは、経済産業省の事業再構築補助金制度で採択され、実現に至ったものです。)

輪島塗は現在、地域の産業や経済においてどのような位置づけですか?

輪島市の事業所数構成比は、「卸売・小売・飲食」が34.7%と最も多く、次に多いのが「製造業」の26.8%です。 地域の基幹産業である輪島塗の事業所が多いことが、製造業の割合が高い大きな理由です。3番目に多いのが宿泊サービス業であり、輪島市の経済構造は、漆器と観光の街であることを表しています。

輪島塗の生産額は1991年の年間180億円をピークに年々減り続け、今はその1/4ほどにまで落ち込んでいます。商工会議所では、海外で認められることで日本国内での人気も再燃し生産が復活することを狙い、「ジャパンブランド支援事業」を展開しています。伝統工芸である輪島塗は全国的に見てもブランド力が高く、職人になりたい人からは憧れの職業と見られていることもあり、雇用の場としての輪島塗復活も目指すところです。

輪島塗の魅力はどんなところにあるとお考えですか?

店内に並ぶ漆器の作品群

桐本さんに以前「漆は水分保湿を続けて硬くなる。それがふっくらとした口触りのよさを感じさせる」という話を伺って、実際に使ってみたらやはり、プラスチックなどでは絶対に得られないような感触だったんです。もちろん機能美というのも漆の魅力ですが、独特のその触感や口触りというのも大きな魅力のひとつだと感じます。

ヨーロッパでは、「輪島塗は製造のすべての工程を何人もの熟練の職人さんが担当して最終形まで持っていく。たいへんな技術と手間が必要だから高価なんです」と説明すると、納得して評価していただけます。やはりヨーロッパには、職人のモノ創りという文化が根付いているんですよね。視察でルイ・ヴィトンの工房に行った時に、職人さんたちが「自分はすごい仕事をしているんだ」というプライドを持ってイキイキと働いていたのをみた時、輪島でもこんな風に仕事をしてもらえたらいいなと思いました。

輪島キリモト代表の桐本泰一様は、輪島市の産業や経済の発展など、地域創生にどのように貢献されていますか?

桐本さんは、「売れるものづくり」を目標に、漆器業を続けるうえで大切な企画やデザイン、マーケティングなどを学びたい人を対象にした「輪島クリエイティブデザイン塾」で講師をされています。輪島の職人さんの意識や知識、技能の向上を図ることで、輪島市の産業のレベルを上げる活動に携わっています。若い職人さんを育てるといった基盤作りのような活動は、輪島塗の再生に必要不可欠だと思います。

輪島塗というのは一つの地域資源であり、地域を活性化するために外せない産業です。輪島キリモトさんは、近隣の宿泊施設と連携して、観光客が輪島にいながらにして海外の人に漆器を紹介するため、デジタル配信を通した見学の受け入れやライブコマースなどにも注力されています。また、輪島に来て地元の美味しいものを食べて宿泊して輪島塗の工房やスタジオを見学する「体験型ツアー」みたいなものもやられています。

桐本さんは、そういった活動に積極的にチャレンジすることで、ほかの事業者さんたちに常に刺激を与え続けていると思います。桐本さんみたいな方が何人も出てくると、産地としてのレベルが上がり、互いに刺激し合って高め合える関係を築くことができるのではないかというふうに思います。


輪島塗は今後どのような形で継承されていくと予想されますか?

日本の伝統工芸である輪島塗は、文化財という形で確実に残っていくと思います。一方産業として復活していくという意味での継承でいうと、桐本さんのようにいろいろなことに積極的に取り組んで、少しでも発展させたいという思いで活動される方がもっとたくさん現れる必要があると考えています。

昔ながらのやり方で輪島塗という伝統を守っていくことも素晴らしいことですが、輪島塗の技術や発想などを多分野で活かしていくことも必要なのではないでしょうか。漆器というものにもこだわらずにさまざまなことにチャレンジすることで事業を拡大して残っていくということも、輪島塗を継承する重要な要素だと思います。

外資系ホテルのインテリアやオブジェなどにも輪島キリモトの輪島塗の技術が生かされています。


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