見出し画像

宇和島市の小中学校が抱える授業における課題解決を目指し、オンライン授業の充実と推進に向けた実証実験を実施

Featuring: 宇和島市様
 
日本では、少子化の影響で年々子どもの数が減少しています。また、小中学校における児童・生徒の不登校者数も増加傾向にあり、今日の教育現場では、児童・生徒数の減少とともに課題となっています。宇和島市の小中学校も例外ではなく、人口減少と少子化が進むことにより児童・生徒数は減少傾向にあり、また、児童・生徒の不登校者数も増加傾向にあります。こういった状況下で、小規模の小学校では児童数の減少により複式学級※1の設置を余儀なくされ、この環境下で学ぶ児童たちは、同級生同士での意見交換や発表の機会が限られるという課題に直面しています。

一方で、同市にある特定の中学校に在校する不登校生徒においては、校内サポートルーム※2での支援が行われていましたが、オンラインで行う授業では「よく見えない」「よく聞こえない」といった視聴環境への課題が生じていました。これらの課題の解決に向け、同市では2024年1月から6月において「オンライン授業の充実と推進に向けた実証実験」を行い、オンライン授業における環境の改善と充実を図るため、ZoomRoomsとNeatデバイスの導入効果について検証を行いました。

※1:2つ以上の学年で構成される学級
※2:教室に入りづらい、または自宅から出られない児童生徒に対する支援の一環として、愛媛県が不登校対策事業の一環として設置している教室
 

左より、宇和島市教育委員会学校教育課  指導係 岡崎正太郎様
宇和島市企画政策部デジタル推進課デジタル推進係 小島佑貴様

宇和島市の課題と実証実験実施の背景


オンライン授業の充実と推進に向けた実証実験の実施にはどんな背景があったのでしょうか?


宇和島市教育委員会学校教育課 岡崎様:今回実施した実証実験は、複式学級における学習状況の改善と、不登校生徒への支援の強化を目指したものです。
 
宇和島市には、現在33校の小中学校があります。学校数は多いのですが、山間部や島嶼部には小規模校がたくさんあり、さらに少子化の影響で複数学年の児童が同じ教室で学ぶ複式学級が増加しています。複式学級をはじめ、少人数、小規模学級での授業を進めるにあたり、課題となっているのが児童間の意見の交流です。学習したことを他者に発信し、意見を交換し理解を深める機会が、地域の学習発表会などに限られていたという状況でした。
 
宇和島市では、市内の中学校の一つである城東中学校に不登校支援サポートルームを設けており、常時6〜7名の生徒が利用しています。サポートルームでは、生徒が個別に学習を進めており、登校ナビゲーターという教員が、必要に応じて個別に学習を支援しています。サポートルームでの学習には、Zoomとタブレットを利用した通常学級の授業視聴も取り入れていたのですが、先生や発表者の声が聞こえづらい、音声が途切れる、黒板の字が見えないといった不満の声があがっており、学習の定着に向けた強化が図れていない状況でした。
 
宇和島市では、地域や行政課題の解決やサービスの向上などを目指し、2023年に、Zoomビデオコミュニケーションの運営会社であるZVC JAPAN株式会社と協定を結んでいます。Zoomを利用したオンラインコミュニケーションを、教育環境の改善に生かすことを模索しているなかで、Neatをご紹介いただいたことが、今回の実証実験につながりました。
 

コミュニケーションの質を一番に考えてNeatをご選択


 
今回の実証実験にNeatデバイスを選定した理由は何ですか?
宇和島市企画政策部デジタル推進課デジタル推進係 小島様:宇和島市では、コロナ禍を機にタブレットなどを使用してオンライン会議を行ってきましたが、小中学校のオンライン授業で対面同様のコミュニケーションを図りたいとなったときに、果たしてこの環境で実現できるのかという課題が生まれました。オンラインで何を実現したいかによって、デバイスの選定が必要になってくると思っていますし、今回のテーマは教育ですので、教員目線での使いやすさや児童・生徒同士のコミュニケーションにおける質の担保が、一番大切だと考えました。その点を重視して他のデバイスとも性能を比較し、Neatデバイスを選びました。
 
 
実証実験の概要と具体的な実施内容を教えてください。

岡崎様:2024年の1月から6月に、「複式学級における学習状況の改善」と、「不登校生徒への支援の強化」を目的とする実証実験を実施しました。対象者は、2つの小学校の複式学級で学ぶ1・2年生の児童と、中学校1校に設けている不登校サポートルームに通う生徒です。いずれも、Zoom RoomsとNeatデバイスを使用したオンライン授業の実証実験です。
 
複式学級では、Zoom RoomsとNeat Bar、Neat Padを使用して、道徳、国語、生活科のオンライン授業を行いました。不登校生徒はサポートルームで、Zoom RoomsとNeat Frameを用いて、理科や社会、数学のオンライン授業を受け、さらに全校集会の様子も見られるようにしました。
 
本実験では、リアルさの追求による体験価値の向上と、機器操作手順の簡素化による教員負担の軽減が実現できるかを検証しました。
 

オンラインコミュニケーションに特化したデバイスを利用することのメリット


Neatデバイスの使用感、操作性や性能はいかがでしたか?

岡崎様:今回の実証実験では、体験価値を向上させる上で重要な、画角(見え方)と、集音(聞こえ方)を検証しています。Neatデバイスの広角カメラによる画角と画質とともに、個人を自動フレーミングするオートフレーミング機能、1つのカメラで複数人をコマ割りするシンメトリー機能の性能が、オンライン授業を行ううえでどのように有効かを確認しました。音声の方も同様に、Neatデバイスの高性能マイクスピーカーによる収音範囲と音声品質や、双方向の同時会話ができるダブルトーク制御機能などの性能を確認できました。
 
Neatデバイスの性能は、画質や音声のよさと画角や収音範囲の広さが際立っていました。その性能は、それまでオンライン授業で使用していたタブレットとは、比較にならないものでした。オートフレーミング機能やシンメトリー機能により、先生や児童、生徒一人ひとりの表情がはっきりと確認でき、同時に話しても双方の声を拾うダブルトーク機能で会話が聞き取りやすいというのも大きなメリットでした。本実験で、オンライン・コミュニケーションのデバイスとして特化した機器だということを、あらためて認識しました。

Neat Barを通して行われる複式学級の授業

オンライン授業には、設定や操作が教員の負担になるのではないかという懸念がありましたが、「Neatデバイスは、操作性がよく手軽に使用できる」と、本実験に参加した教員からも評価されました。

「もっと早く出会いたかった」~見やすさ、聞きやすさの飛躍的改善による学習の成果

 
実証実験の効果として、具体的にどんなことが感じられましたか?

岡崎様:複式学級の国語の授業では、シンメトリー機能で児童一人ひとりの顔がはっきり映るので、先生や児童が教室間で指名し合いながら意見交換や発表を行うなど、かなり対面に近い環境が整ったと感じました。道徳の授業では、1・2年生が同じ教材を使って一緒に授業を行うことができ、相手の表情が良く見えることは、児童が価値観を共有して深め広げることに有効だと思いました。海岸部や山間部など、子どもたちが生活している地域の紹介をした生活の授業では、オンラインによりわかりやすい情報交換が可能になりました。オンラインでの意見交換や発表の機会を設けることで、学習の質を高めることができたと感じています。
 
小島様:校内サポートルームでNeat Frameを使用したオンライン授業を受けた生徒からは、「タブレットでのオンライン授業に比べて画質や音質がよく、ストレスを感じなくなった」という感想を聞きました。生徒先生ともに、Neat Frameがなくなると困るという声が聞かれ、オンラインによる学習の定着を実感しました。昨年度、3年生だった生徒からは、「もっと早くNeat Frameと出会いたかった」という声もいただきました。その生徒は画角や集音面での課題が解決したことで、オンラインでも集中して授業に参加することができ、高校に進学することができたと学校より伺いました。こうした事例から、対面に近いオンライン授業の実現が、校内サポートルームでの学習環境の改善につながり、不登校生徒における登校意欲の向上を図るひとつのきっかけになり得ると感じています。


本実験に参加した生徒からは、広角カメラによる高画質で、それまで困難だったチョークの色の見分けも容易になり、板書が見やすく学習に集中できるという好評価をいただきました。教員からも音声や画質の良さが高く評価されました。

広角カメラで白板全体を映し出すNeat Frame(画面左端)

 
今回実施した実証実験では、「授業に参加する一人ひとりの顔や表情、声をよりリアルに表現し、対面に近いコミュニケーションが図れる環境の実現」を目指しました。Neatデバイスは、オンラインでもリアルに近い授業環境を実現することができ、課題解決に向けた一つの有効な手段であることが確認できました。

リモートで接続した学校のお友達にNeat Barを通して発表する様子


実証実験終了後の対応はどうなりますか?

岡崎様:複式学級では、市内の小規模小学校の統廃合の状況を見ながら、オンライン授業の本格導入をあらためて検討する予定です。不登校生徒支援では、デジタル田園都市国家構想交付金を活用し、今年度中にサポートルームでのオンライン授業の実施を目指しています。サポートルームには、NeatデバイスとZoom Roomsを導入し、希望する生徒が受けたい授業を、オンラインで提供する計画です。
 
Neatデバイスの使用により新たに生まれた課題はありますか?

岡崎様:機器自体に生まれた課題というのは何もないですが、こういう素晴らしいデバイスがあることを知ったことによって、改めてオンライン授業のあり方をどうすべきかという運用面の課題が生まれました。これは、前向きな課題と言えます。
 
今回の実証実験で、授業で使う機会が増えるようなオンライン環境が整備できるということが、改めてわかりました。今後は、小学校の統廃合の状況も見ながら、オンライン授業を技術の進化に合わせてどのように定着させていくか、身近なものにしていくかというところを洗い出していくことが、我々教育行政サービスを提供する側の今後の課題だと考えて、進めていこうと思います。
 

”学びたい子どもたちが取り残されない”オンライン活用の可能性

 
Neatデバイスを宇和島市の小・中学校のオンライン授業で活用することによる今後の展望を、お聞かせください。

岡崎様:現在、宇和島市内6校の中学校のうち1校だけがNeatデバイスを利用させてもらっています。教員不足などの課題がまだクリアできていないという状況ではありますが、いずれは全ての中学校に導入していければと考えています。教育行政サービスを提供する我々としては、「通常学級には入れないけれど、別室であればオンラインで授業を受けられる」という“学びたい子どもたち”が、取り残されることなく学習に参加できるようになることを、引き続き目指していきます。
 
今回の実証実験では、それぞれの小学校の児童が少なくても、Neatデバイスを使うことによって、離れた学校にいる児童と対面のような意見の交流ができるということが確認できました。オンラインを活用することで生まれた、「都会にはないような自然豊かな環境で、児童数の少なさを気にすることなく学習ができる」というメリットを十分に生かしながら、教育活動が進められればと思っています。
 
小島様:Neatデバイスのような高性能の機器を活用したオンライン授業は、どこにいても授業を平等に受けられる教育環境を生み出します。デメリットと考えられる過疎地域をも特性として生かせるというのが、オンラインの素晴らしいところだと思います。今回の実証実験の結果が、教育現場でのオンライン授業の推進や定着と誰一人取り残さない教育環境の実現につながればと考えています。

公式Twitterで更新情報や最新情報を発信しています。よろしければTwitterのフォローをお願いします!